「あの人のこと、大好きだったなぁ……」

あなたには、そんなふうに思い出せる昔の恋人や大好きだった人はいますか？

 

きっと誰にでも、そんな大好きだった人がいるのではないでしょうか？

 

そんな大好きだった人が、あるときから自分にとって「大嫌いな人」に変わるとしたら＿＿。

あまり考えたくない事かもしれませんが、そういうことってあり得るんです。

 

今回のお話は、私がかつて大好きだった元彼を振ってやったときのお話です。

 

その元彼は高校時代の同級生でした。

 

「ずっと好きでした。付き合ってください」

 

高校３年生の時、会話を交わすことが少なかった彼から告白されました。　

私に向ける彼の真剣な眼差しや、彼の真っ直ぐな気持ちが私の心にもスッと届き、彼とのお付き合いがスタートしたのです。

 

2年ほどで別れることになりましたが、私にとって初めての恋人だった彼との幸せな思い出はたくさん残りました。

 

それと共に時が経つにつれ、少しずつ変化していく彼への気持ち。

 

「大好きな人」から「大好きだった人」へ…。

 

別れて４年ほど経った頃、なんと2人が再会するきっかけが訪れたのです。

それは24歳の頃に開催された高校時代の同窓会でした。

 

私が会場で辺りを見回していると、トントンと後ろから誰かに肩を叩かれました。

振り返ると、そこにはあの頃より少し大人になった彼の姿が。

 

「久し振り」

「うん、久し振り…」

 

最初はぎこちなさもありましたが、徐々に他愛のない会話ができるようになりました。

 

彼の人柄はあの頃のまま。

付き合っていた頃と変わらない会話に花が咲き、穏やかな時間が過ぎていったのです。

 

同窓会が終わり、帰宅してから携帯電話を開くと、なんと彼からメールが届いていたのです。

 

「今日は楽しかった。ありがとう。また会えてよかった」

 

＿＿彼と同じ気持ちになっていた私は、その言葉に心が躍り始めていました。

 

そこから毎日メールのやり取りが始まったのです。

 

「おはよう」

「もう仕事終った？」

 

互いの日常報告や他愛のない話のやりとりが続く日々。

付き合っていた頃の懐かしく幸せだった思い出が、メールのやり取りをしているうちに蘇ってきます。

 

そして私は気付いてしまったのです。

また彼を好きになってしまったのだと…。

 

「もう別れたのに、また好きになるなんて…」

 

自分の気持ちに戸惑いがある中、彼からこんなメールが届きました。

 

「今度2人で会わない？」

 

なんと彼からデートに誘われたのです。

 

そこから私達はデートを重ねるようになりました。

水族館や、昔２人で一緒に過ごした公園などいろんな所に行きました。

ただ出掛けただけではありません。恋人のように手を繋ぐ事もあったのです。

 

「彼もまた私を好きになってくれたのかも」

 

私はそう感じ、彼に好きだという気持ちを伝えようと心に決めたのです。

 

そしてとうとう告白をする日に。

その日２人で訪れたのは、付き合っていた頃によく訪れた河川敷。

他愛のない話で盛り上がり、とても楽しく安らげるひとときでした。

 

「こんなに楽しそうにしてくれているのだからきっと告白も成功するはず」

 

そんな期待を持ちながら、私は彼に告白しました。

 

しかし、そんな期待はすぐさま崩れ落ちることに…。

 

「俺…実は彼女いるんだよね」

 

＿＿＿？？？？？

 

思いもよらない彼の言葉に、私の頭は大混乱。

 

あんなにたくさん２人で出かけておいて、彼女がいるってどういうこと？

手も繋いでたよね？

どういうつもりで私と会っていたの？

 

悔しい…！！！

 

こんな不誠実な人を好きになってしまったなんて！

 

グチャグチャになった私の感情。

 

その場で彼の行動の不誠実さを指摘し、

 

「もう会わない。バイバイ」

 

と彼に伝え、帰宅したのです。

流れる涙を拭いながら…。

 

それから1ヶ月ほど時は過ぎ、彼への気持ちもすっかりなくなっていた頃です。

突然彼から電話があったのです。

 

「え…今更何？」

 

嫌悪感を感じつつも電話に出てみると、彼は信じ難い言葉を口にしたのです。

 

「彼女と別れたんだよね」

「久し振りに２人で会ってすごく楽しかった。また会えないかな」

 

呆れ返るような発言ばかり…。

 

「あわよくば付き合えると思われてるだろうな…」

 

直感的にそのように察した私は、

 

「彼女と別れたんだ。そっか。残念だったね。まぁ私に報告されても何か起こる訳じゃないけどね！」

 

と告げました。

 

彼は「え…あぁ…」としどろもどろ。

 

私は「じゃあね！」と電話を切り、彼の連絡先も削除。

 

＿＿これできっと永久に彼と繋がることはありません。

 

「…あんなに大好きだったのになぁ」

 

そう思うと切なくもなりましたが、彼を振ってやった自分に「よくやった」と言いたい気持ちの方が大きかったです。

とても清々しく吹っ切れた自分がいました。

 

「きっとこれもいつか、笑い話になるね」

 

彼の名前がなくなったアドレス帳を眺めながら、私の気持ちはもう新しい未来に心が弾んでいたのでした。