信じて!親友を守りたい一心で取った行動とは…!?
kazuha

「あんたなんか、顔も見たくない——!」

 

紀子が、私をにらみつけて言う。

 

「え…?違うよ…私…紀子のために…。」

 

__私を信じて!

 

と叫びたかったが、胸が苦しくて声にならない。

 

紀子が私に背を向ける。

私の目は涙でいっぱいで、去っていく紀子の背中もよく見えなかった——。

 

私と紀子は、高校のテニス部の仲間。

私たちは、切磋琢磨しながら高校3年間を共に過ごした。

優しくて大人な紀子が私は大好き!

 

でも、ある事件のせいで、私と紀子の関係が崩れようとしていた。

 

『福田先輩と付き合うことになったの!』

 

紀子からのメール…これが全ての始まりだった。

 

福田先輩はテニス部のOBで、時々部活に来てアドバイスをくれる。

 

紀子はいつも、

 

「素敵~!」

 

と言っていた。

 

先輩と紀子が付き合えたことは、嬉しい。

…が、私は素直に喜べなかった。

なぜなら先輩には、女癖が悪いという噂があったからだ。

 

__あくまでも噂だし…。

 

単なる噂話で、紀子を惑わせたくない。

そう思い、私はよぎった不安を振り払った。

 

——だが、数ヶ月もしないうちに、私の不安は現実のものになった。

 

ある週末、私が妹とカフェにいると、こんな会話が聞こえてきたのだ。

 

「俺、今女子高生と付き合ってんだよね~!」

「あれ?お前、彼女いなかった?」

「まぁね。だから女子高生は2番目。」

「お前、いつか刺されるよ。」

 

__うわ、最っ低…。

 

下品な会話に吐き気を感じながら、声の主を見た。

 

すると、声の主はなんと、福田先輩だったのだ——!

 

__はぁ…!?じゃあ、❝2番目の女子高生❞って、紀子のこと!?紀子は二股かけられてるってこと!?

 

「信っじられない——!ゆ…ゆっ…ゆるせないっ!」

 

私は、目の前のフォークを握りしめた。

 

「お姉ちゃん、落ち着いて!」

 

妹が、怒り狂った私の腕をつかんだ。

 

__紀子に伝えないと!

 

紀子を守りたい…その一心だけだったのだ——。

でも、その思いは届かなかった…。

 

ぱちんっ——!

放課後の校舎庭に響く…。

私は、頬を押さえた。

__痛い。

 

「福田先輩はそんな人じゃない!嘘つかないで!

あんたなんか、顔も見たくない!」

 

紀子は、自分の目で見たものしか信じない性格。

 

__嘘じゃないよ…と言いたくても証拠がない。

 

私は、何もできず立ち尽くした。

 

家に帰ってからも、私は無力感に打ちひしがれていた。

すると、ガチャ——!

私の部屋のドアが開き、妹が入ってきた。

妹は、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべながら話し出す。

 

「実は…私、あるデータを持ってます!」

「は?データ?」

 

困惑する私に、妹は続ける。

 

「この前のカフェでの会話!私、録音してたの!」

「え!?」

「あの人ずーっと二股話してたじゃん?だから録ってみた!」

 

妹は、てへっというポーズをとる。

 

「やるじゃん!あんた天才っ!」

 

私は、妹の頭をムツゴロウさんのようにわしゃわしゃ撫でた。

 

__これで、福田先輩に自白させられる!でも…どうやる?

 

考えろ…。

 

「あっ!」

 

あの人!

福田先輩が現役時代のテニス部キャプテン!

全男子部員から恐れられていた。

 

__女子には優しくて、よく面倒みてもらったなぁ。

 

私は、キャプテンに協力をお願いした。

福田先輩には❝部活のアドバイスが欲しい❞ということで、テニス部の部室に呼び出した。

 

——決戦の日!

 

何も知らない福田先輩は、

 

「おす~!俺に何聞きたいの?」

 

と、部室に入ってきた。

 

「すみません先輩!実は聞いてほしいものがあって…。」

 

そう言って、私がスマホの再生ボタンを押すと、先日のカフェでの二股話が流れた。

 

『——女子高生はあくまでも2番目かな。

俺のこと信じ切ってるし、最高なんだよねぇ——!』

 

空気が凍り付く。

静まり返った部室の奥から、キャプテンの声が響いてきた。

 

「どういうことだ?」

 

ドスの効いた声だ。

私の背筋も震えあがる——!

 

「え!?何でココに——!?え…と、何が…スかね?」

 

福田先輩は、混乱してしどろもどろだ。

 

「とぼけんじゃねぇ!」

 

ビク——っ!先輩の体が飛び跳ねる。

 

「ひぃ~すんません!俺…二股してます…。」

 

——ようやく、認めたな。

だが、これで終わらせはしない!

 

ガラ——、

部室の扉が開き、そこには紀子の姿が。

 

「先輩…二股してるって、本当だったんですね。」

「の…紀子!?」

 

私は今朝、紀子に部室前に来てもらうよう、連絡していたのだ。

 

「今のは…冗談だよ、紀子ぉ!」

 

この期に及んで、言い訳をしようとする先輩に、

 

「ほんっと、最低ですね!」

 

紀子が言い放つ。

 

「ちっ、俺みてーなイイ男振って後悔すんなよ!」

 

と、負け惜しみを言う先輩に、紀子は呆れた顔で言った。

 

「先輩…ちょー情けないですね。」

 

——「どこが好きだったんだろう?」

 

2人になった部室から、校庭を眺めながら紀子が言った。

 

「私…紀子を守りたくて…。でも、逆に傷つけたよね…。」

 

謝ろうとする私を、紀子はぎゅっと抱きしめた。

 

「ううん…信じてあげられなくて、ごめん…。私のために…ありがとう。」

 

私は、わんわん泣いた。

 

女子高生の友情の大勝利である——!

コメント

  1. wakana より:

    妹さんも素敵ですね!私、こういう時に冷静に機転が利く人ってすごいと思うんです!
    スカッとしました笑

    • kazuha より:

      wakanaさん、ありがとうございます(*^^*)
      妹キャラを褒めていただいて、嬉しいです☆★
      スカッとしてもらえてよかったです(●´ω`●)
      ありがとうございます♪♪

  2. 佐藤友理 より:

    最後に先輩が捨て台詞とともに去っていくところとか、スカッとしたのももちろんなんですが、私や紀子の気持ちが伝わってきました。
    情景もイメージしやすいし、ほんと小説読んでるみたいでした。

    • kazuha より:

      佐藤友里さん、ありがとうございますっ(*^^*)
      わー、先輩の捨て台詞スカッとしてもらえて嬉しいですー☆★
      情景イメージしていただけましたか?(●´ω`●)
      小説を読んでるみたいだなんて…、めちゃくちゃありがたいお言葉、感無量ですっ☆彡

  3. れいこ より:

    kazuhaさん〜〜
    むっちゃドキドキしたわ!!

    おもしろかった〜。
    マンガの原作みたいでした。

    最後の一文が特に好き!!

    • kazuha より:

      れいこさん、ありがとうございます^_^
      うわぁ〜めちゃくちゃうれしいですっ☆★

      最後の一文を褒めてくださるなんて!!
      締め方も「これでいいのかなぁ?」とすごく悩んだので、そう言ってもらえるとうれしいですっ(o^^o)

  4. かよ より:

    傷付けまいと思ってる表現に、どこか遠慮があったりすると逆に、ぎこちなくなって上手く伝わらなかったり、相手も想いとは違う捉え方で受け止めたりすることありますよね。
    でも、最後は理解し合えてよかった^ ^

    • kazuha より:

      かよさん、ありがとうございます(*´▽`*)
      そうですよね…。
      状況によっても、受け取り方って変わりますもんね。
      最後まで読んで下さり、ありがとうございました

  5. のそことんかつ より:

    まずは言わせてください!
    福田め〜o(`ω´ )o いい気味だ!

    そして、妹ちゃんグッジョブ!

    ドラマや映画を観ているように、文章がどんどん入ってきてとても読みやすかったです!
    むしろ自分がkazuhaさんを通してその場にいるような臨場感も味わえました!!
    大人になった今ではもう体験できない青春がそこにはありましたね。
    kazuhaさんの高校生時代を少し覗けたような気がします。

    • kazuha より:

      のそことんかつさん、ありがとうございます(*´▽`*)
      福田ムカつくでしょ~??笑
      妹冴えてるよねっ♪♪
      主人公と共にムカついてくれてありがとうございます☆★
      わぁ~、疑似体験をしてもらえたなんて、めちゃくちゃ嬉しい褒め言葉ですっ(´艸`*)
      なつかしい青春を味わってもらえたとしたら、この上ない喜びです♪♪

  6. リリー より:

    若い頃は他からの優しさを全て敵に見がちなところを、上手く誘導したなと思います生きていく上で、。伝えることがいかに難しいかがわかる物語ですね。よかれと思うことがうまくいかない場合の辛さ、手に取るようにわかります。

    • kazuha より:

      リリーさん、ありがとうございます(*^-^*)
      めちゃくちゃ深い感想…。嬉しいです☆★
      感動しました(*_ _)
      ホンマに、伝え方って難しいですよね・・・。
      今でも、伝え方の大切さを学ぶ今日この頃です(>_<)

  7. ヒトミ より:

    冒頭から衝撃的なやり取りで、「なになに!?なにがあったん!?」と、とても興味が湧きました!!

    kazuha さんのお友達を守りたいという思いが真っ直ぐ伝わってきましたし、お友達と和解もできて、本当によかった(⁠ ⁠◜⁠‿⁠◝⁠ ⁠)⁠

    妹さん、MVP賞ものですね(⁠ ⁠◜⁠‿⁠◝⁠ ⁠)⁠笑
    グッジョブ!!

    出演者もみんな魅力的で、素敵な作品ありがとうございました(⁠ ⁠◜⁠‿⁠◝⁠ ⁠)⁠

    • kazuha より:

      ヒトミさん、ありがとうございます(*^^*)
      興味湧いてくれて、うれしいです~っ!!☆★
      妹キャラへのMVPありがとうございますっ(´艸`*)♪笑
      うわぁ~出演者にまで魅力を感じてくださって、本当にうれしいですっ☆彡
      彼女たちも喜んでいると思いますっ(●´ω`●)

  8. えりな より:

    kazuhaさんの友達を想う真っ直ぐな気持ちに胸が熱くなりました…!信じてもらえない間のもどかしい時間に悶々。。。
    そこへ妹のナイスプレー最高!
    探偵気質のある私としては、最後の証明出来る場面のスカッとは気持ちよかったです♡まさに友情の大勝利ですね!♡

    • kazuha より:

      えりなさーん☆★
      ありがとうっ^ – ^
      妹ファインプレーでしょ?♪♪笑笑
      えりなさん、探偵気質だったのねっ(●´ω`●)笑
      スカッとしてもらえてよかったですーー★彡

  9. non より:

    悩み多き高校時代を思い出しました。
    友達って時にこんな風に思いがうまく伝わらなかったり、誤解が生じたり…。でもこんなことを乗り越えて行くからこそ、大切だし唯一無二の存在になって行くんですね。最後のスッキリ感と、ますます絆を深めた2人に笑顔になりました!

    • kazuha より:

      nonさん、ありがとうございます^ – ^
      そーなんですそーなんですっ‼︎
      学生時代って悩み多き時期ですよねぇ…。
      彼氏が絡むとややこしくなったり・・・
      スッキリして笑顔になってもらえたなんて、めちゃくちゃ嬉しいですっ☆★

  10. ジュン より:

    文章から映像が浮かんで来ました^_^
    ストーリーの展開がスムーズで
    まるでドラマを観てるようですね

    • kazuha より:

      ジュンさん、ありがとうございます^ – ^
      映像浮かびましたか?!
      展開もスムーズと言っていただけて、めっちゃ嬉しいです(●´ω`●)☆★

  11. yuki より:

    ドラマのような展開にハラハラしました。まるで、私も女子高生に戻った気になってしまうくらい。kazuhaさんの友だちを思う行動に感動しました。

    • kazuha より:

      yukiさん、ありがとうございます^ – ^
      ハラハラしていただけましたか!!
      主人公と一緒に女子高生に戻ってもらえたなんて、嬉しい限りです(●´ω`●)

  12. Yokko より:

    私、少女漫画が大好きなんですが、まるで漫画を読んでるかのようにはらはらしながら一気に読みました!
    面白かったです!

    • kazuha より:

      Yokkoさん、ありがとうございます^ – ^
      わぁ〜漫画を読んでるかのようにって…めちゃくちゃ嬉しいです♪♪
      最高の褒め言葉ですっ(●´ω`●)

  13. Sally より:

    イヤな男ーーーーーー!でも最後スッキリしました。
    友情の勝利でよかったです。
    こういう恋愛の話、最近まったく耳にしないので楽しかった…❤

    • kazuha より:

      Sallyさん、ありがとうございます^ – ^
      イヤな男ですよねっ?!笑
      スッキリしてもらえてよかったですー☆★
      大人になると、なかなかこんな恋愛話聞く機会ないですよねっ(´∀`=)笑

  14. ゆみえ より:

    は?こんな人ほんとにいるの?って自分がそこにいるみたいにイラっとしてしまいました笑
    最後は真実が伝わってホッとしました。

    • kazuha より:

      ゆみえさん、ありがとうございます^ – ^
      おぉーそこにいるみたいに思ってもらえましたかぁーー☆★なんて嬉しいっ‼︎
      最後ホッとしていただけて、よかったです(*´꒳`*)

  15. aako より:

    女性の中高生あるあるで、そうそう、そんなつもりじゃなかったのに、口を利かなくなったりってあるなあと頷いてました。
    読みながら、完全に気持ちは、高校時代にワープしていました。仲直りできてよかった。

    • kazuha より:

      aakoさん、ありがとうございます^ – ^
      女子学生あるあるですよね☆★
      文章の世界へワープしてもらえたみたいで、めちゃくちゃ嬉しいです(*´꒳`*)

  16. sachika より:

    ドラマのシーンかと思ってしまうような展開に、ドキドキハラハラ…
    二股ムカつく怒
    最後はスッキリ!
    恋愛より友情が勝った文書に、あっぱれです。
    学生時代に戻った気分で、読ませてもらいました笑。

    • kazuha より:

      sachikaさん、ありがとうございます^ – ^
      ドラマのシーンだなんてっ‼︎
      ドキドキハラハラしてもらえて、嬉しいですーー(*´꒳`*)
      二股ムカつきますよねっ‼︎
      一緒に学生時代戻ってもらえて、なによりですー☆★

  17. ほのかあかり より:

    ドラマのような展開に、高校時代を思い出しました。こういう経験はないですけど笑
    二股はよくないですが、親友を思いやって忠告したり、彼氏が優先になったり。目に浮かびました。

    • kazuha より:

      わー高校時代を思い出して、懐かしんでいただけたでしょうか?^_^
      ふふふ…学生時代ならではの行動ですよね!
      お読みいただき、嬉しいです☆★

  18. さつき より:

    ドラマみたいな展開に、ドキドキ緊張しながら読みました!
    福田先輩、めっちゃムカつきますね!
    文章でこんなに感情移入できるのも、kazuhaさんの巧みな文章ゆえだなと思いました!
    女子高生の友情の大勝利!よかった!!

    • kazuha より:

      さつきさんっ^_^
      早速読んでいただき、ありがとうございます☆★
      福田先輩にムカついてもらえて、うれしいですーー(o^^o)
      そうなんですよねっ、嫌な奴でしょ?w
      少しでも、主人公に感情移入してもらえたとしたら、めちゃくちゃ光栄ですっ♪♪

Yokko へ返信する 取り消す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

TOP