「産むんじゃなかった…」
ハッとして、感情のままにこぼれ落ちた言葉の重みに気づいた時には手遅れだった。
娘の目には涙がひかり、しっかり彼女の耳に届いたことを物語っている。
「べつに産んでほしかったわけじゃない!勝手に産んだくせに!!」
泣きながら、言い返す娘。
申し訳なさに背中がヒヤリと冷たくなって
「ごめん……」
小さくつぶやいてみたけれど、今度は彼女の耳に届いていないのか反応がない。
肩を震わせて静かに泣いている。
中学生の頃、娘は不登校になり、昼夜逆転生活を送っていた。
彼女を出産した時は、「この子が幸せでありますように…」たしかに、そう願った。
陣痛が始まってから20時間後、小さな身体にぎゅっと力を入れて顔を真っ赤にして泣く娘に会えたときは愛おしかった。
成長した今も大切に思う気持ちに変わりはない。
なのに、何してんねん。
どんなに腹がたっても絶対に言ってはいけない一言。
吐いた唾は飲めないって、知ってるのに。
思い返せば、今しかない時間を大事にして欲しくて、学校に行くよう毎日声掛けをしていた。
しかし、娘から返事がなくてイライラしたり、「家にいるのだから」と罰としての家事を頼んだりもした。
ときには、感情的になって声を荒げて自己嫌悪したり、、将来への心配から不安を煽ったりしたことも。
うまく伝えられないもどかしさと、何が正解なのか分からないやりきれなさが渦巻く。
私なりに考えた、「背中を押したい」という娘を思っての行動だった。
けれど、私の行動は間違えていたと娘の涙でようやく気がついたのだ。
自分では、現代の多様性について理解しているつもりだった。
だけど、本当に「つもり」でしかなかったのだ。
心の中では「学校に行くべきだ」と思っていたのだから…。
当然、そんな私には不登校の娘を受け入れられなかった。
本当の私は、なんて勝手なんだろう。
引きこもりの子供と親の痛ましいニュースが目について、先の見えない真っ暗なトンネルの中にいるようで苦しい気持ちにもなった。
けれど、ツライ苦しいと感じている、その気持ちはぜんぶ私の都合でしかなかった。
笑えるくらいに、ぜんぶ。
当時のイライラを解剖してみると、
「なんで我が子だけ学校に行けないんだろう…育て方が悪かったのだろうか…?」
という、私自身の悲しみだったように思う。
不登校の理由を生活の乱れからサボっていると決めつけ、娘の気持ちを考えようともしていなかった。
娘を信じることができず勝手に未来を悲観していた私は、ありのままを受け入れるどころか娘を全否定して、居場所を奪っていたのだ。
「学校行けなくてごめん。将来どうなるんやろ…このままじゃ良くないよね。」
って、娘自身が一番思っていたはずなのに。
私の姿勢が彼女の心に蓋をして、娘自身も伝えたいことをうまく言葉にできなかったんだと思う。
学校に行くから、大切で大好きなんじゃない。
学校に行けなくても、大切で大好き。
そんな当たり前のことを見失ってた。
こんな母親でごめんなさい。
生まれて来てくれて、ほんまにありがとう。
過去の自分の態度を思い返し、目の前で泣く娘に対して「ごめん」と「ありがとう」で胸がいっぱいになった。
娘に対する最低な一言と態度を、謝った。
2人で存分に話して泣いたらスッキリして、お互いに良い意味での開き直りができた。
そして、ありのままの娘を受け入れられたことで、私の態度が変わり状況が大きく変わっていった。
まず、娘が明るくなり会話が増えた。
そして、私は娘の担任に心を開いて、現状の登校や進路について相談できるようになった。
私も娘もいつのまにか作っていた周囲への見えない壁がなくなって、娘は育成センターの支援教室に行けるようになった。
中学生で不登校だった娘はいま、大学を卒業して一般企業で働いている。
あの時、ほんとの手遅れになる前に自分の過ちに気づいて良かった。
今では、娘のおかげで母としてのレベルアップができたと思うことにしている。
なぜなら、大抵のことでは動じなくなったし、心のキャパが増えた気がするからだ。
我が子を信じるというスキルも身についた。
もし、下の子達が娘と同じように不登校になっても、もう同じ過ちは犯さない。
必ずしも学校に行くことだけが正解ではなく、子供を信じて見守る時間も大切だと知ったから。
学校に行けなくても、なんとかなる。
どんな時でも、気持ちの在り方ひとつで状況は変えられる。
どんな道を歩んでも、それが正解!
コメント
うちの娘もいじめに会い 親子 で悩んで 登校は親と毎日 10分くらいの距離をいろんな話しを しながら歩いた 事が思い出なっています。今は結婚してかわわい女のこに恵まれ シヤワセに暮らしてます。今は頑張り時です
読んだら涙が…。同じように不登校の子供がいます。
私も何度も学校に行けないことについて責めた言い方をしたり、家にいるなら家事くらいしなさいと言ったりしています。
みんな悩みながら子育てしてるんだなと、励まされました。
本当に…産まれた時は元気ならそれでいいと思ってたはずですが、いつのまにか大きな期待していたのでしょうね。
気づかせてもらってありがとうございました。
とても読みやすく引き込まれました!
私は、子供の不登校を経験したことはないのですが、もし不登校になってしまったら‥と考えたことがあります。
「どんな道を歩んでも、それが正解!」
ほんとうにそうですね!
私も子供達に何があっても、それが正解と信じて見守って行きたいと思いました。
ありがとうございました!
普通に問題なく過ごしてるように見える家庭でも、いろいろあるのでは?と思いました。
今が幸せなら、良かったです。
不登校で悩んでいる友達にも教えます!
母娘で切り拓いたおふたりの人生、素敵だなと思いました。
私は高校時代不登校でした。がんばることに疲れた、なんで学校に行ってるんだっけ?と自分を見失っていました。
学校に行けない私に祖母はキツく当たりましたが、両親だけは私を信じてくれていました。
その後大学へ進み、現在は4人の子の母をしています。両親から「高校の時のあの期間は私にとって必要な時間だったと思う」と言ってもらえて、とても心が救われました。
自分を信じてくれる人の存在や言葉で、人はがんばれるんですよね。私もそんな親でいたいと、大切な気持ちに気づかせていただきました。
コメントありがとうございます。
貴重なエピソードを教えていただきありがとうございます。ステキなお母様ですね。
「自分を信じてくれる人の存在や言葉で、人はがんばれる」、本当にそうですよね。私も自分の周りの人を大切にしたいと思います。
長女の中学受験の時のことを思い出しました。
家族は味方でなくちゃいけないのに、寄り添うどころか私まで圧をかけてしまって。
おおらかに耳を傾けてあげる余裕は大切ですよね。
でもその当時はそれすらも気付けなかった。
多分、娘さんと私の娘、同い年ぐらいだと思います。
状況は違えども、あさみさんと娘さんの心情に頷きながら読ませて頂きました。
コメントありがとうございます。
頷きながら読んでいただけたとのこと、心情が文字を通して伝わって嬉しいです。
娘さん、我が家の娘と同じようなお年頃なのですね。娘さんの子育てお疲れ様でした。 手が離れると寂しさもありますが、ホッとしますね(^^)
私は逆に母親に「生まれて来なければよかった」といった経験があります。
私には子供は居ませんが、言う方も言われる方も「つい」に振り回されて後悔しますよね。
娘さんも大きくなられて社会人として立派に活躍されているという事は、シッカリその後のサポートもされて素敵なお嬢さんに育ったのですね!
コメントありがとうございます。
つい言ってしまった一言が大きな後悔につながること、ありますよね。
言う方も言われる方もツライですね(TT)
現在の娘は社会人1年生を楽しんでいます。就職先が決まったとにはホッとしました。
母としての葛藤がいたいほど伝わってきました。よかれと思って、いろいろ言ってしまったり、やってしまうこと、私もあります。
信じて見守るって難しいんですよね。
でも、いい結果になって良かったですね。
それもあさみさんが、ご自分の心をオープンにして、娘さんとお話しできたからですよね!いいお話だなあと思います。
きっとたくさんの人を励ましてくれる作品だと思いました。
コメントありがとうございます。
共感していただけて嬉しいです。
温かいコメントに、私が励まされました!
これからも子供と一緒に人として成長していきたいと思います。
子供の悩みや葛藤も本当にわかります。でも親も人間ですから、苦しむ子供を見るつらさも、育ててきた日々への反省や後悔もありますよね。
そんな姿や思いを隠さずに表現してくださった文章を読んで、同じように子育てをしている自分はとても励まされました。
きっとたくさん悩んだこの時間は、親子両方にとって必要だった大切な機会だったのではないかと心から感じました。
より信じられる存在となって、絆を深めたあさみさんと娘さんを、心から応援します。
私も自分の子供たちが歩む道を信じて、見守っていく勇気をいただきました。ありがとうございました!
コメントありがとうございます。
文章を読んで励まされたと言っていただき、嬉しいです。
「親子にとって必要だった」きっと、そうですね。私は人生無駄なことはないと思っているので、遠回りでもカッコ悪くても必要だったのだと思います。
母としてダメな自分を曝け出すのは恥ずかしくもあったので、私も「書いて良かった」と励まされた気持ちになりました。
コメントありがとうございます。
頭では分かっていても、心がついていかず…でした。
これからも、安全基地のように子供達をまるごとドーンと受け入れていきたいです。
私は双子の娘がいます。
まだ3歳ですが癇癪、イヤイヤが激しかった時期に自分が放った言葉に後悔した経験があります。
産まれてきてくれた時はあんなに「理想の母親になる!!」って強く思っていたのに現実はそんなに甘くなくて……。
母親として自分が未熟な事もありますが。
娘の成長と共に想像もできない色々な事があると思います…
「子供を信じて見守る」「ありのままの娘を受け入れる」というのは簡単ではないと思いますがこの言葉に共感しましたので投票させてもらいました。
また、私もこのような気持ちを忘れず子育てをしていきたいと改めて思わせてもらいました!!
ありがとうございます!
コメントありがとうございます。
ずっと自分の黒歴史だと思っていたので、温かいコメントをいただいて嬉しいです。
3歳の双子ちゃん、可愛いでしょうね!
大変なこともあるかもしれませんが、娘さん達とのステキな絆を作っていけますように。
(*´꒳`*)
子育てって見守る事といいますが、心配だからこそ干渉してしまうんですよね
タイトルに「大失敗」と示してありましたが、最後には「それが正解」にヤラれた〜と(笑)それが投票の決め手となりました。
コメントありがとうございます。
そうなんですよね!!心配だからこそ干渉してしまいます。
ずっと大失敗だと思っていたのですが、もっと長い目で見て「終わり良ければ全て良し」と思えるようになりました。
どんな道を歩んでも、それが正解。
本当にそうですね。
学校に行かなくても、大切で大好き
という言葉に、胸がキューっとしました。
大切だからこそ、おおらかになれない時が、私も沢山ありました。
ぶつかったり、すれちがったりしながら…
それでよかったんだと、救われた気持ちになりました。
とっても素敵な母娘のストーリー
ありがとうございました!
うちも次男が不登校になりました。
何が本人のためにいいのか、ほんとに悩み悩みまくりました。
いったん出てしまった言葉を戻すことはできない。
そこからの葛藤にひき込まれました。
どんな道を歩んでも信じて見守る。
私も同じ思いです。
コメントありがとうございます。
aakoさんも次男様が不登校だったんですね。
あの頃は、思い出に変わる日がくるなんて考えられませんでした。
「信じて見守る」に、同じように共感していただいて嬉しいです。
もし私があさみさんと同じ状況になったら、不登校という事実を受け入れることは、簡単にできないだろうなと思いました。
私にもこどもがいるので、他人事ではないなーと感じました。
娘様は、自分を受け入れてくれるお母さんをもって、幸せ者ですね(*˘︶˘*).
素敵な文章をありがとうございました!!
コメントありがとうございます。
頭では分かっていても、心がついていかず…でした。
これからも、安全基地のように子供達をまるごとドーンと受け入れていきたいです。
娘さんを信じて見守ること、そうしたいと思っても、簡単にできることではないと思います。
あさみさんのように「どんな道を歩んでも、それが正解!」とお母さんが味方でいてくれたら、どれだけ心強いことか!
私もこの言葉を、自分自身と大切な人たちに心から言ってあげられる人でありたいと思いました。
素敵なお話をありがとうございました。
コメントありがとうございます。
人目を気にしたり良い親でなければいけないと思ったりしていました。
シンプルに自分が母からして欲しかったことを考えていたら、「信じて見守る」ことにたどり着きました。
どんな道を選んでも正解って、大切な人達だけではなく「自分自身にも言う」って素敵ですね!教えていただき、ありがとうございます。